芥見下々先生によるダークファンタジー作品『呪術廻戦』は、TVアニメ化や映画化を経て高い人気を誇っていますが、その作中に見られる他作品との類似点、特に「オマージュ」を巡る議論は絶えません。
中でも、物語の後半に展開される「死滅回游編」は、その設定や構造から、特定の著名なジャンプ作品との類似性が強く指摘され、「パクリ疑惑」の中心となることが多いです。
本記事では「呪術廻戦」死滅回游編におけるパクリ疑惑について解説していきます。
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【呪術廻戦】「死滅回游編」とは
©芥見下々／集英社死滅回游編（単行本18巻160話から25巻222話まで）は、羂索（けんじゃく）が仕組んだ「呪術を与えられた者たちの殺し合い」であるデスゲームを描いています。
羂索の目的は、日本全土を対象とする儀式を行い、天元と人類を同化させることで、人類を強制的に進化させるための「慣らし」を終えることです。
死滅回游には詳細なルール（総則）が設定されており、参加者である「泳者（プレイヤー）」は、他者の生命を絶つことで得られる点（ポイント）を管理し、100得点を消費することでルールを追加できる仕組みになっています。
【呪術廻戦】パクリ疑惑だと言われる理由
死滅回游編が「パクリすぎ」だと指摘される主な理由は、同じ「週刊少年ジャンプ」で連載されている冨樫義博先生の『HUNTER×HUNTER』（HxH）との構造的な類似性にあります。
芥見先生がHxHの大ファンであることを公言しているため、この類似点はファンサービスや深いリスペクト（敬意）を込めたオマージュとして捉えられることが多いですが、その設定の酷似から「パクリ」という強い言葉が使われることもあります。
(1) ゲーム・ルールの構造
死滅回游は、その「ゲーム」の要素や「ルール」「特別な条件」の設定がHxHの複数の長編エピソードを強く連想させます。
グリードアイランド（G.I.）編との比較
死滅回游は、特殊なゲームを通じて物語が進行する点で、HxHの「グリードアイランド」編をインスピレーション源にしていると指摘されます。
ただし、死滅回游（CG）はG.I.よりもリスクが高く、複雑さが異なると評する読者もいます。
継承戦編との比較
一部のファンは、死滅回游がG.I.よりも、「継承戦編」の複雑なルールや、キャラクター間の駆け引き、新しい登場人物の増加といった雰囲気に近いと感じています。
緻密な能力設定とルール説明
死滅回游のルールの記述方法（総則）は、漢字が多く独特な言い回しであり、HxHの「ハンター十ヶ条」や念能力の詳細な解説を思い起こさせます。
HxHと同様に、JJKも能力の設定や説明が細かく、能力をどう活かして戦うかという濃厚なバトル描写が見どころであり、この点も類似性として挙げられます。
(2) 根幹システムの類似
死滅回游編だけでなく、呪術廻戦全体の能力の根幹もHxHの影響を強く受けているとされています。
縛り（バインド）と制約と誓約（せいやく・と・せいやく）
呪術廻戦の「縛り」は、「自分自身が定めたルールを守ることで、能力を強くする」という設定であり、HxHの「制約と誓約」（自分自身が定めたルールを守ることで、より強力な能力を得る）に酷似していると言われています。
これは能力バトル漫画において画期的な設定であったため、特に既視感を覚える読者が多い要素です。
【呪術廻戦】「パクリ」か「オマージュ」か
類似点の多さから「パクリすぎ」という意見も上がりますが、多くの読者はこれを「オマージュ」の範疇で楽しんでいます。
(1) 作者の意図とリスペクト
芥見先生は、自身が影響を受けた作品についてオープンに語っており、『BLEACH』の作者である久保帯人先生との対談では、直接「BLEACHに影響を受けて漫画を始めた」と伝えています。
影響元の作者たちが、後進の作家による敬意ある模倣を一種のコミュニケーションとして受け入れている側面も、この問題を複雑にしています
(2) 著作権法における「アイデア」と「表現」
法的な観点から見ると、著作権法は具体的な「表現」を保護対象としており、「思想、感情又はアイデア」といった抽象的な概念や設定そのものは保護の対象外です。
たとえ「複雑なゲームのルール設定」や「自分に制約を課すことで能力を強化するシステム」が類似していたとしても、それはアイデアの範疇と見なされる可能性が高く、著作権侵害（パクリ）と断定することは極めて困難です。
著作権侵害が成立するのは、具体的な構図、コマ割り、または表現形式が元の作品の「表現上の本質的な特徴」と同一性を有する場合です。
『呪術廻戦』で指摘される類似点の中には、虎杖の「黒閃」の構図がHxHのゴンの必殺技のシーンと「構図もコマ割りも見れば見るほどほぼ同じ」であるという、具体的な表現レベルでの類似も存在し、こちらは単なるアイデアの流用ではないと指摘されています。
(3) 読者の反応と評価
死滅回游編は、多くの新キャラクターが登場し、物語の複雑さが増したため、毎週の連載を追う読者の中には、話の展開の遅さやキャラクターの名前を覚えるのに苦労するといった否定的な意見もありました。
特に、HxHの「キメラ＝アント編」や「継承戦編」で説明が多すぎると批判される部分を連想させ、「HxHの最悪な部分を思い出させる」という声も一部にはあります。
しかし、肯定派の読者は、死滅回游編を「HxHからのインスピレーションを受けつつ、自分の道を歩み、HxH並みのクオリティを誇っている」「スピリチュアルサクセサー（精神的後継者）」と評価し、作品自体の面白さやキャラクターの魅力を高く評価しています。一気読みをすれば、ペース配分が適切だと感じる意見もあります
【呪術廻戦】パクリ疑惑についてまとめ
『呪術廻戦』の死滅回游編におけるパクリ疑惑は、特に物語の根幹となる「デスゲーム」と「ルールによる能力強化」という設定が、作者が影響を公言する『HUNTER×HUNTER』の要素と構造的に酷似していることから生じています。
この類似性の多くは、著作権法上保護されない「アイデア」の範疇にあると考えられますが、具体的な構図の模倣や、著名な作品の要素を巧みに取り入れた「オマージュ」として、読者や評論家の間で活発に議論されています。
最終的に、この表現を「パクリ」と捉えるか「リスペクトの証」と捉えるかは、個々の読者の価値観に委ねられています。
