「チ。地球の運動について」というマンガは物語は15世紀のヨーロッパを舞台に、地動説を命がけで研究する人々の生き様と信念を描いています。
2020年から2022年にかけて連載され、全8巻で完結しています。2024年の10月からテレビアニメ化がスタートし、再び注目を集めています。
地動説に出会った第一章の主人公ラファウが毒をのんで自害するシーンはアニメでも大きな話題となりました。
しかし、「チ。地球の運動について」では、死んだはずのラファウが物語の後半で再登場する展開があります。
この記事では、死んだはずのラファウが生きているのはなぜか?、再登場した理由などについて考察していきたいと思います。
Contents
ラファウは生きていた?死亡したのは何話?
「チ。地球の運動について」では、ラファウが死亡したシーンは原作の1巻第4話、アニメでは3話で描かれています。
ラファウは、12歳で大学に進学する予定が決まっていたほどの神童で特に神学において卓越した才能を持っていました。
しかし、義父のポトツキの旧友で”禁じられた研究”をしている異端者・フベルトに出会ったことで今まで信じられていなかった地動説に出会います。
ラファウは半ば強制的にフベルトの天体観測の研究を手伝わされ、次第に地動説の魅力に引き込まれていきます。
フベルトが異端者として異端尋問館のノヴァクに火刑に処された後、ラファウは地動説の真実を証明するために命を懸ける決意を固めます。
しかし、ラファウにも異端者としての疑いがかけられ、ノヴァクにとらえられてしまいます。
裁判で改心を宣言すれば釈放されたものの、ラファウは地動説を信じると宣言したため、拷問が決まってしまいます。
拷問前夜にラファウは与えられたワインに毒を盛り、自害します。
ラファウは自分が死ぬ瀬戸際の時でも地動説を信じ、その行動にノヴァクは衝撃を覚えることとなりました。
ラファウの再登場はいつ?
1巻で早々にして死亡したラファウですが、その後2度にわたって作中に登場します。
1巻第4話以降のラファウ登場シーンを紹介します。
- ノヴァクが死亡する直前の幻として登場
- アルベルト少年の家庭教師として登場
①ノヴァクが死亡する直前の幻として登場
1巻で死んだはずのラファウは8巻の第56話でノヴァクの前に幻として再登場します。
地動説が異端思想ではなかったということ、自分だけが地動説論者をとらえてきたのはノヴァクだけだったことにようやく気が付きます。
ノヴァクは人生を賭けてやってきたことが全部無駄だったことをラファウに打ち明けます。
②アルベルト少年の家庭教師として登場
2回目の登場は、「チ。地球の運動について」第8巻の60話です。
1468年、ポーランドでパン屋で働く青年・アルベルトがの少年時代の回想シーンで家庭教師として登場しました。
ラファウは青年の姿をしていますが、年齢は記されていません。
少年アルベルトの好奇心の優秀さと好奇心を見抜き、議論できる意見交換会への参加を推薦しました。
しかし、アルベルトが”知”に対して興味をもつことに反対するを持つアルベルトの父親とラファウは考え方の違いによりもめることになり、ラファウはアルベルトの父親を殺害してしまうことになります。
死んだラファウと再登場したラファウは同一人物なのか考察
死亡したラファウが再び登場したことで混乱した読者も多いことでしょう。
ここでは、1巻で死亡したラファウと8巻で再登場した青年姿のラファウが同一人物なのか、はたまた別の人物なのか、いろいろな視点から考察をしていきます。
作中では、この2人の関係性は明確には描かれていませんが、2人は別の人物であると考えている人が多いようです。
- ラファウは火刑を逃れて生き延びた説
- 年齢の計算が合わない
- パラレルワールド説
ラファウは火刑を逃れて生き延びた説
辻褄をあわせる解釈に「ラファウは火刑を逃れて生き延びた」という説があるようですが、少々無理があるかと思います。
それ以前の異端審査官ノヴァクの語りと矛盾が生じてしまいます。
年齢の計算が合わない
仮に12歳のラファウと青年のラファウが同一人物だった場合、年齢の計算が合わないことになります。
「チ。ー地球の運動についてー」1巻での時代設定は15世紀前期となっており、ラファウの年齢は12歳です。
第二章ではラファウの死から10年後の出来事が描かれ、第三章ではそれからさらに25年後の出来事が描かれるため、35年の年月が経っていることになります。
つまり、12歳のラファウがそのまま歳をとった場合は47歳になっているはずです。
8巻に登場したラファウは47歳には見えず、20代くらいのような見た目、雰囲気で描かれています。
このような理由から、少年ラファウと青年ラファウは同一人物であるとは考えずらいです。
パラレルワールド説
「チ。ー地球の運動についてー」はパラレルワールドになっているという考察があります。
まず多くの人が指摘している舞台設定の記述の違いです。
1巻冒頭と第8集59話は、同一の城塞都市を描きながら、前者は「15世紀(前期)P王国」と特定を避け、後者は「1468年ポーランド王国」と明記しています。
単行本の表紙デザインも8巻だけことなっており、メッセージ性がたかいものになっています。
第7集までは白の背景に登場人物が描かれており、8集だけがほぼ漆黒の星空になっています。
作中に決定的なセリフがあります。最終巻46ページでアントニ司教はノヴァクにこう告げる。
この言葉と、ノヴァクの末期のシーンの幻のラファウのセリフは呼応します。
タイトルにこめられた3つの「チ。」
「チ。」というタイトルは3つの意味が込められています。
まず地動説の「地」。そして「知」と「血」です。
ラファウは地動説を求める「知」と、異端として排除される「血」。
そして、純粋すぎる知への忠誠心ゆえにアルベルトの父を殺害するラファウは、まさに「知」と「血」が一体化した存在になっています。
ラファウが「チ。」という作品全体を代弁する存在としているのではないかと私は考えます。