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あらすじ
『Fate/Strange Fake』は、『Fate/Zero』の出来事が起こったものの、『Fate/Stay Night』の出来事は起こらなかった並行世界におけるスピンオフ作品です。
物語の舞台は、アメリカ合衆国の架空の都市スノーフィールド。
偽りの聖杯戦争と真なる聖杯戦争
この地で発現した聖杯戦争は、何者かによるオリジナルの模倣である「偽りの聖杯戦争」でした。
黒幕たちの計画は、この「偽りの聖杯戦争」を犠牲として、「真なる聖杯戦争」を呼び起こすという二重構造です。計画では、まず偽のサーヴァント6体を召喚し、最後に偽にして真のセイバーを「呼び水」とすることで、残りの真のサーヴァント6体を召喚する予定でした。
規格外のイレギュラーたち
しかし、この模倣は不完全であり、システムには欠陥が存在し、選ばれるはずのないサーヴァントが呼び出されます。
偽の聖杯戦争の陣営には、慢心を捨てた英雄王ギルガメッシュ(アーチャー)と、彼の唯一無二の親友であるエルキドゥ(ランサー)という、本来の聖杯戦争の枠を超えた規格外の英霊たちが集います。また、マスターにはロード・エルメロイⅡ世の破天荒な弟子フラット・エスカルドス(バーサーカーのマスター)や、高位の死徒であるジェスター・カルトゥーレ(アサシンのマスター)などが参加しています。
真の聖杯戦争が始まると、召喚されるはずのないエクストラクラスの番人(ウォッチャー)や、神性を削ぎ落としてアヴェンジャー化した真アーチャー(アルケイデス)などが登場し、事態はさらに混沌としていきます。
マスターの中には、巨大な魔力を持つ少女アヤカ・サジョウ(セイバーのマスター)や、目的のために手段を選ばない警察署長オーランド・リーヴ(キャスターのマスター)、そして黒幕側に雇われた傭兵シグマ(ウォッチャーのマスター)などがおり、総勢13組の参戦者が入り乱れる大乱戦へと突入します
『Fate/Strange Fake』はなぜ人気?
成田良悟氏による巧みな群像劇の構成
FSFが人気を博す最大の要因は、作者である成田良悟氏の群像劇(アンサンブルキャスト)の書き方にあります。
多角的な視点(POV)の活用
物語は特定の主人公を持たず、『Fate/Zero』と同様に、登場人物それぞれの視点から描かれますが、FSFではその手法が極めて効果的に機能しています。
成田氏の作品は登場人物が多いことで知られていますが、この多角的な視点を用いることで、登場人物が多くても出番の偏りを避け、読者が混乱せずに物語を追えるようになっています。
複雑なプロットの魅力
登場する13組のマスターとサーヴァント、さらに警察や死徒、時計塔関係者といった脇役たちも個別のサブプロットを持ち、物語全体が複雑に絡み合っています。
例えば、黒幕の一人であるファルデウスは、自分の計画通りに進めようと極めて妥当な行動をとっているにもかかわらず、他のキャラクターの思惑を俯瞰できる読者視点からは「悪手」に映り、物語にユーモラスな要素さえ加えています。
この手法は「もし浦沢直樹がFateを書いたら」という印象を与えるほど、ミステリー要素と複雑性が際立っています
チート級サーヴァントによるド派手な「インフレ」バトル
FSFは、「チートvsチート」とも称される、シリーズの中でも群を抜いて戦闘力のインフレが激しい作品として知られています。
最強クラスの競演
偽の聖杯戦争の開幕戦として、ギルガメッシュ(この戦いでは慢心を捨てて本気)と、その唯一無二の友であり対等に渡り合えるエルキドゥが、初戦から全力の宝具を撃ち合い、周囲の砂漠をガラス化させるという凄まじい戦闘を見せつけます。
「ぼくのかんがえた最強」からの脱却
作者の成田氏は当初、インフレしすぎる設定が「ぼくのかんがえた最強のサーヴァント(メアリー・スー)」と揶揄されることを恐れていましたが、原作者の奈須きのこ氏から「インフレだのはこっちがなんとかするから、ビビって縮こまったものを書くのは止めるんだボーイ!」と発破をかけられ、現在の規格外な物語展開になったという経緯があります。
これにより、読者は遠慮のない大規模でド派手なバトルを期待できるようになっています。
強者の対等な戦い
ギルガメッシュの宝具「王の財宝」の斉射を無傷で凌ぎ、「弱い。エアを出してこい」と挑発する真アーチャー(アルケイデス)など、本家で最強とされた英霊に匹敵、あるいはそれを上回る強者が次々と登場し、力の均衡が保たれた大乱戦が展開されます。
『Fate/Strange Fake』高い期待を集めるアニメ化
アニメ化においても、そのクオリティの高さが期待感と人気を押し上げています。
制作は『Fate/Apocrypha』を手掛けたA-1 Picturesが担当。
監督の榎戸駿氏、坂詰嵩仁氏は、『Fate/Grand Order』のCMなどで長年Fateシリーズの映像美を担ってきたクリエイターであり、特に戦闘シーンにおける高い表現力が期待されています。
音楽は澤野弘之氏が担当しており、2019年の作品紹介CMの時点でその映像と音楽が視聴者を熱狂させ、本格的なアニメ化への要望を高めました。
『Fate/Strange Fake』まとめ
『Fate/Strange Fake』は、そのルーツがエイプリルフールのジョークであったにもかかわらず、成田良悟氏の卓越した群像劇の手法によって、膨大な数の規格外のキャラクターたちを制御しつつ、物語の複雑性と読み応えを両立させています。
また、奈須きのこ氏公認の「やりたい放題」な世界線であるため、最強クラスの英霊たちが本気でぶつかり合う極度のインフレバトルが展開される点、そして型月世界の細部までを拾い上げたファンを喜ばせる「相互接続感」が、作品の圧倒的な人気を支える主要因となっています。



